「人と人とが関わり合うというのは、とくに男と女が関わり合うというのは、なんていうか、もっと全体的な問題なんだ。もっと曖昧で、身勝手で、もっとせつないことだ」
太字は村上春樹作.「 女のいない男たち 」(文春文庫) (p.36). Kindle 版より抜粋
こんなことを主人公の家福に言わせている。アカデミー賞を受けた同名の映画と違い、村上春樹の原作には登場人物は4人だけ。車の中の会話でストーリーは進んでいく。
文学、もっと平たくいえば言葉が主人公の口から放たれると、その瞬間から別の生き物のように一人歩きする。言葉を受け取った者は自分の経験と照らし合わせる。「腑に落ちる」かどうかで、相手との距離が変わっていく。
自分はそもそも言葉足らずだと思い知らされる作品だった。