大枚はたいて「1971年版平凡社大百科事典」を買ったのが、知識欲旺盛な25歳の頃。書棚に百科事典が並ぶ景色は憧れだった。全36巻を揃えて一番に調べたのが「般若心経」、次に「吉田松陰」、そして「禅」という項目だったと記憶している。
まずもっとも関心の強かった般若心経についてだが、解説文を読んでいきなり裏切られた。解説者である中村氏の長い解説文があり、その項の最後に彼は「(この経典は)消極的実相論」であると断じた。
僕はその一言に疑いを持った。悔しかった。それどころか、四国の人間を舐めてるな!
と、怒りを感じた。
「こんな百科事典は役に立たない!」
日本を代表する仏教学者の中村 元氏の言を疑った。
仏教学者とは何か。評論は構わないが、仏教を信心する立場の者にしか解説は許してはならない。今もってそう思う。
百科事典のお陰で、僕の性格はずいぶんとヒネクレタのかも。