もう10年ほど前の話。300人を超えるお客様の集合写真を写すことになった。横並び36人で段は8列。椅子を36脚横並びにすると幅は24mにもなる。カメラの「引き」にも制約がある。ストロボ4800wでも光量不足。
(さて困った。いまさら後に引けない)
立ち向かうしかなかった。腹も決まった。この注文に最高の機材で望むべく、赤字覚悟で”SIGMA sd Quattro H” (3800万高画素、6200Pixel機)と表題の超ワイドレンズを購入(写真)。当時どのメーカーも、画面の隅々まで破綻のないレンズは作っていなかった。いや、作れなかった。福島の”SIGMA”技術陣の心意気に一礼するほどの写りだ。
また、当時のデジカメ性能は、SIGMAカメラで精いっぱい。ところが実証実験で感度をISO400に上げると、盛大に画面ノイズが出る。
(これではまずい。使えないぞ)
追い込まれた我々に、神の救い手が登場。高感度の得意なSonyが”αシリーズ”で4240万画素機を投入してきた。その"Sony α7-RⅢ"にも飛びついた。数々の集合写真を写してきた経験上、300人規模では、顔の大きさが画面の埃程度にしか写らないことは分かってはいたが、豆粒人物の表情まできっちり再現したかった。
いまでこそ言えるが、この集合写真を受注したための経費は売り上げの1.6倍。今ではほとんど使わない"Sigma12-24DG"は我々の記念塚になった。しかし我ながらの意地に呆れてしまう。そんな「画素数バカ」につける薬も当時はなかった。いつか、600人の集合もあるかもしれない。望むところだ。