「オリオン・スタジオ」

1999年から3年間だけ神戸元町にスタジオ・オリオン”を開いた。開業のコンセプトは「社会に通用するフルデジタルスタジオ」。何ができるのか、全国に例がなく、当時としては革新的な挑戦ではあったが、実験の域を出なかったのも事実。ちょうど初代”iMAC”が発売された頃で、1998年春には明石海峡大橋も完成。四国人の気分は浮き立っていた。

しかし、「撮影のデジタル化」は膨大な費用がかかる割には、神戸の顧客にデジタルの優位性を伝え切れない。当時の写真館はまだ大型フィルムカメラを使うのが一般的。好奇心旺盛な同業他社の見学申し込みもかなりあった。

そのころ、徳島本店、クレメント・スタジオは猛然と忙しく、神戸のカメラマンを、ひとりで掛け持ち。毎夜徳島での仕事を終えると、車に撮影機材を積み明石海峡を渡った。肉体的限界はすぐにきたが、心は弾んでいた。最新のデジタル一眼に有頂天になっていた。もう後戻りできない。デジタル撮影を一気に推し進める決心をつけるしかない。いや、費用も掛かりすぎ、追い込まれていたのかもしれない。

そして2010年、大阪にも進出し15年が過ぎた。振り返れば、3年間の神戸経験はあらゆるきっかけを育む舞台となり、大阪スタジオに受け継がれた。結局カメラがどうであれ、撮影即顧客プレゼンが可能となったことで売り上げは向上した。累積システム投資は数千万。いま果たして投資を回収できたのだろうか、現在進行形である。

© 2026 阿部写真舘 公式:1936年創業の花と光に包まれたフォトスタジオ