M氏が亡くなるまでに描き貯めた作品は相当数残っている。細密描写のポートレイト、ヨーロッパの風景など見惚れるほどの描きぶりで、その技術の高さが一流であることは間違いない。各地の大使館にも飾られているようだ。
晩年に描いたこの"Happines"シリーズだけが異質なのである。友人には失礼かもしれないが、この作品について自分が感じたことを素直に記しておく。
M氏は「生への執念、そして舐めつくした艱難辛苦のすべてをここに描きこんだ」
この作品はどこに飾ればいいのだろう。ムンクの叫びに似た作者の悲哀を感じてしまうと、部屋全体が重たくなる。