ここは僕の原点ともいえる場所、丹後町の間人(たいざ)。2月、厳しく吹き付けるみぞれの中、半島を徒歩で一周した。それは今から半世紀前のこと。これからどんな写真を撮って生活を支えていくのか。暗中模索の一年だった。自分にとっていわばどん底を見ていた。
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間人(1976年の撮影)
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間人(2010年撮影)。何も変わっていない。道路わきにフェンスが設けられている。
どん底に追い打ちをかけるかのように、塩分をたっぷり含んだずぶ濡れのコートは凍りつき、塩を吹くほどに濡れたカメラも一台ダメにした。あれは一体何だったのか。己のあの姿を外見から判断されたとしたら、ただの夢遊病者か自殺願望を抱えた不審者に見えただろう。