この作品、作者は東山彰氏。2015年の直木賞受賞作だ。いまさら周回遅れもいいところだが、本作の後に出版された「僕が殺した人と僕を殺した人」を先に読んでいて、その実力に圧倒されていた。彼の登場は、ちょうど又吉直樹の「火花」と同様の衝撃を受けた気がしている。
それでは東山のデビュー作も読まざるを得ないと観念したわけだ。いずれの作も1980年代の台湾事情を描いている。自伝、ミステリー、冒険小説などのジャンルをすべて一作に包含している。そしてそれらをはるかに飛び越えて読むものを引き付ける。また、本物の漢字使い手はやはり大陸文化を知るものに敵わない。そう気づかされる。