あまりの清い姿に、僕は千円札を投げ入れて、彼に向かって合掌した。
真夏の暑い最中。まるで石柱が建っているかのようだった。一時間後にもう一度前を通ったが、ピタリと微動だにせず。彼の足指に注目してほしい。一本一本が生きている。指の発達度合いが歩きの凄まじさを物語っている。
托鉢修行は「近江商人」の〈天秤棒修行〉に似ている。天秤棒に鍋の蓋を括り付けられ、「この蓋を全部売り切るまで家には入れん!」そうして、若い息子は担いでトボトボ京の街を歩き続けるが、どうにも売れない。結末は泣きわめきながら市井のおばちゃんに「どうかこの鍋蓋一つでいいから買うてください」。そんな話だったと記憶している。また別項で。