青色の追求途上で生まれたこの作品も、一見するとライトなブルー。しかしその奥底に別の色が隠れている。ゴッホの「青」ではない、フェルメールの「蒼」でもない。もっと伸びやかで主張する「蒼」だ。あるとき、画伯は眉間に深いしわを寄せながらその秘密を語ってくれた。
「アオの発色を際立たせるために、下地にたっぷり赤を塗り込んである。この絵の具の厚さを見てみい」。
現物の前にしないと、なかなか理解していただけないが、僕はあの時の興奮を忘れない。作家の執念というものを見せつけられた。「蒼」を出すために、刷り上がった作品をさらに作家自身の手で一点一点加筆した。だから同じものが2枚とない。
本作は画商を通じて100枚だけのリトグラフとして発表された。
そのリトの2/100を作家自身から譲り受けたこと。作品は友情を超える証。