サックスの世界を少しご紹介します。
私の恩師、英夫先生のテナーサックスを見てみてください↓
管体が標準より細く、実に繊細な音がします。当然音程のコントロールは難しくなります。先生の実力は日本の最高峰のおひとり。メジャーデビュー後6年半活躍されました。ご結婚もあり引退されましたが、現在は全国で3人しかいないと言われる指導講師職でいらっしゃいます。
ソニー・ロリンズが大好きで、デビュー以来中米音楽一色。キューバ・ジャマイカのソウルミュージックである、東の「東京スカパラダイス」と西の「スカポンタス」が互いに競い合っていた「スカ」と「ソカ」という音楽スタイル。バンドは表のビートを支えるパートと裏の旋律を奏でるパートがあり、〈裏打ち部隊〉の存在が重要です。実に陽気で自由な音楽。
私は大阪で3年ほど直接指導を受けました。私は「師事した」と言えるほどのレベルの弟子ではありませんが、その指導理念は並の方ではありません。出来ないことを叱るのでなく、できることを確認し伸ばそうとしてくれました。いきなりブルースを吹き始め「僕のフレーズを聴きながら、裏の4小節を吹いてみて」。そんなわけで僕は汗だくになりながら4小節をアドリブで吹くわけです。そして休憩のコーヒーを飲みながら、今の演奏の反省点を述べられるのです。注意点はいつも3つにまとめられる。例えば、
①下降モチーフつくる・・・フレーズが行き詰まると上昇フレーズが多くなってしまっている
➁間を歌う・・・音符を詰め込むことはやめよう
➂息の支え方・・・息を支えるのは足腰
さらにレベルの高いポイント。出来なくても要領はつかめる言葉にしてくれている。
④タンギングの実際はマウスピースを加えて「ドゥーダ!ドゥーダ!」そう語る感じで
➄ピッチベンド、グロートーン、レイドバック。いずれ説明します
⑥サブトーン・・・息を溜めることに集中
サックス奏者としての普段の気配りについても教わった。トピックスだけ並べておきます。
★丹田に力を抜かない生活をする。これを習慣化
★音の安定のため、身体を揺らさない
★いい姿勢=いい呼吸=胸を張る=いいアンブシュア=いい音程
★リガチャー締めすぎに注意
★普段から意識的にゆっくり呼吸すること。座禅呼吸。
★リードの作り方・・・ぬるま湯3分。3日経ったらまた3分。 これを3回してください。
これらの教えは私のような趣味レベルの生徒でも妥協はありません。そして実に明確です。永年のキャリアから来る静かな自信が滲み出てくるような、分厚い人間力と言っていいでしょう。
ここでサックスの巨人の曲を一曲ご紹介します。
"Donna Lee"
チャーリー・パーカーがメンバーで生意気な若造のマイルス・デイビスのために、わざわざ意地悪く難しい曲を書いていじめようとしたもの。サックスプレイヤーの腕試しになっている。1949年の作品。