天気予報ではこの冬一番の寒波
この日、覚悟して"DAHON"に跨る
毎日が冒険じゃなきゃ生きる意味がない
吉野川に架かる橋を
逆風に逆らってペダルを漕ぐ
全行程18km、ここまで8km
ついにギアは2速まで落とした
ぐらつく自転車、突風で橋の欄干に押し付けられそう
これも覚悟していたこと
橋の中ほどに差し掛かると突然頭上に白鷺が現れる
彼は必死に翼を拡げるが僕と同じように
容赦なく押し退けられ前に進めない
最後の5km
遮るもののない区間
サドルに刺さる尾骶骨は痛み悲鳴をあげている
吹きさらしの暴風雪の中に突っ込んでいく
前に進もうとする力を嘲笑うかのように
地獄の雪嵐が舞う
目を開けていられない
したたる鼻水は風で飛ばされどこへ飛んでいくのか
ここで止まってはいけない
無心にペダルを漕ぐ
前に進まない
おのれはこれがしたかったはずだ
無心になれる修行の中に自らを放り込む
冬の滝業のように
一瞬世界が無音になる
すると瞬間がよろこびに変わってゆく
いいんだなあ、この瞬間が
笑い者になる快感
これが情けない程いいんだなあ