「何が悪いというんだ!」 「あんたに、他人の生き方を非難する資格なんてない」 雅彦の静かな拒絶が、要一の火に油を注いだ。 「今までの自分が正しい道を歩んできたとでも? それが錯覚だってことに、いい加減気がついたらどうだ」 要一は、雅彦の放った一言がよほど気に障ったらしい。 「それを変な自信に変えて……開き直っているあんたは、一体何者なんだ! きちんと自分と向き合って考えたことがあるのか。落ち着いて考えてみろ!」
「あんたから見れば、こいつの人生はふがいない生き方に見えるだろうけど」 それまで傍観していた陽子が、冷めた声で割って入った。 「……流されて生きるって、素敵じゃないの」
要一の勢いが一瞬削がれ、場に重苦しい空白が落ちる。雅彦は動かない。その沈黙を肯定するように、要一は言葉を絞り出した。
「……自分が正しい。そう思った瞬間に、あんたは人を傷つけていくんだよ」 「優しさを語る資格は僕にもないが、みんないつかは自分を言葉で飾りたくなる。……『俺が』、『私が』なんて言ってる奴に限って、年を取ったら自分を見失うんだ」
要一は、目の前で固く口を閉ざしたままの雅彦を凝視した。
「『沈黙』というのは悟りを開いた人が口を揃えて言う言葉だが、今あんたに必要なのは、まさにそれだ」 「誰かに気に入られたいと思うのは自然なことだが、それには限界がある。まず、もうひとりの自分に気に入られることだな」 「……いいか、雅彦。まずはその『沈黙』という作業から始めるんだな」
..................................................................................................................
この一文は、自作小説からの一部抜粋です。人生観の衝突を描こうとしたが、力不足を感じ"Gemini"に投げて修整してもらった。
(エスキース「或る晴れた日」からの抜粋でした)

2025.9.10吉野川(東三好町)