五木寛之著「さらばモスクワ愚連隊」

〈プロレタリアート〉,〈安保反対闘争〉など反体制運動は、あの時代も若者たちのムーブメントだった。その世代もやがて〈高度経済成長〉時代に戦士としてなだれ込んでいく。そんな若者たちの新たな価値観を予感させる小説家が求められ、そこに五木寛之が登場した。彼のベストセラー「青春の門」は筑豊を舞台にし、そこから這い上がる若者が主人公。毅然と独り立ちするを姿を描いた。五木の小説は多作で、その作品の数々がまるで協奏曲を聴くように響き合い、自分の中にもどっと流れ込んできた。いつもお洒落でクールな主人公に嫉妬するほど惚れ込んだものだ。中でも直木賞に輝く「蒼ざめた馬を見よ」より「さらばモスクワ愚連隊」が印象に残っていて、読み直してみたが、現代の"C.I.A."モノのドラマを見るよう。読み手にサスペンス映像が押し寄せてくる。1968年に同名で映画化されている。「青春の門」は1969-1994年まで発刊され長大なシリーズとなった。

私の書棚

五木は早稲田のロシア文学科専攻。彼はそこを中退しテレビ界を陰で支えるCMソングライター、コピーライターになる。テレビ時代の幕開けにもピタリと符合する。そんな経歴が眩しかった。表題の作品はロシアがまだソ連であった頃のミュージシャンと若者の物語。それは今どきのC.I.A.ものサスペンスの前触れだった。

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