以前このコラムでご紹介したが、再び「青のシリーズ」よりこの作品。
孝二さんはいつも眉間に深い皴を二本たてていた。しかし気分が晴れると猛然と絵筆を取り描き始める。一日一点のペースで作品を生み出した。まるで たまったものを吐き出すかのように、三日三晩徹夜で描き通した。この青の時代の作品はことさらにブルーの発色に執着していた。深い「青」の部分をよく見ていただきたい。下地の「赤」を感じられないだろうか。ブルーの絵具を使う前にキャンバス下地に赤を全面に塗り込む。塗り込んだキャンバスをいくつも立てかけ、自然乾燥させていた。
「こうしなければ本物の青(発色)は出ない」と語る。
こうも語った。
「僕は日本のゴッホになりたい」
生涯一万点は達成できなかったが、その制作スピードといい、たぐいまれな記憶力。スケッチ旅行に誘うと、助手席から車窓を眺めているだけ。スケッチブックを忘れてきたかと思わせるほど。ところが旅から帰って一週間経つと、
「おーい、できたぞ」と電話でお呼びがかかる。飛んでいくと、何十枚というスケッチ画ができている。驚くほどの記憶力で、どのシーンも僕が見ても場所を特定できた。
彼はコーヒーを愛す。ブレンドのベースは決まってモカマタリ。一杯分につき12粒。きちんと数えた。