「恋愛中毒」

「でも 私 には、 睡眠 時間 を 削っ たり 有ら ん 限り の 体力 を 使っ たり し て 頑張る だけの 動機 も 目的 も なかっ た。 なのに まだ 私 の 中 に、 自分 という 人間 を 認め て もらい たい という 感情 だけが 残っ て い た。 片足 を 上げ て 壁 に よりかかっ て いる だけで 歩こ う とは し て い ない。 親切 な 人 が 通り かかっ て 車 に 乗せ て いっ て くれる のを 期待 し て いる よう な もの だ。 私 は 心底 自分 の 甘い 考え に 呆れ 果て た。」

ーー山本 文緒. 恋愛中毒 (角川文庫) (Kindle の位置No.997-1000). 角川書店. Kindle 版より引用

昨夜の三日月

この小説の作者山本文緒さんは、ジュニア小説出身で、学生時代は落研に属していたそう。作品はとても読みやすい反面、気の短い僕には昭和末期から平成時代を貫く「ミレニアル世代」特有の作風なので好きになれなかった。てっきり僕は彼女が平成生まれだと信じ込んでいた。

ところが彼女は1962年生まれ。作品の文体も描かれる世界も現代の若者に沿ったもので、どんな内容が好まれるか、何に関心を向けるかをきちんと分析構築している。プロ作家はやはりそこが違う。「売る力」を持っている。

われら昭和残党組はおよそ社会の片隅にひっそり暮らしていくしかない。「脱帽」そう思わせるだけのチカラを感じさせる小説だった。

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