このカメラについて語る資格があるのは父の世代(写真館二代目)だろう。
当時はまだガラス乾板全盛期。このイコンタの活躍する時代には、僕は生まれてもいないのだから。操作を理解するのにずいぶん暇がかかる代物。
まずスペックについて説明しよう。
■スーパーイコンタ6x9 V型 (カールツァイス・イエナF3.8付き)
■折りたたみ式スプリングカメラ
■当時(東ドイツ)最高の金属・皮・ガラス、その粋を結集して作られた。
(最新のカメラよりも柔らかなトーンで写真が美しい)
■1950年製造(最終機は1954年)モデルのようだ。
■6×4.5cmのハーフサイズマスクも付いている。
■複雑な二重露光防止機構も付いている。
ざっとこんな感じだが、カメラを手にすると、ちょうど右手の人差し指のかかる所にスプリング開閉ボタンがある。初心者はまずこれにビックリするだろう。たたまれた状態ではただの弁当箱だから。押して開くとまず目に飛び込んでくる。不定形のレンズ繰り出しタスキレールが美しい。シャッターボタンは軍艦部左側にある。先ほどの開閉ボタンを押すと連動してピントを合わせるためのフレーム枠が飛び出す仕掛け。実に巧みな技だ。次に撮影フレームを決定するため、測距ビューを組み立てる。そのうえで別の小窓を覗きながら、右手中指を器用に動かしピントを決定するわけだ。むろんAE&AF動体撮影など夢のまた夢の時代。しかしツァイスのメッキ技術は凄い。70年前そのままの輝きだ。現在中古市場では15~20万くらいで取引されているようだ。このイエナでなく、テッサーF3.5はもっと高価だったようだ。
82年前、祖父が写真館を始めた頃、父は家を建てるかカメラを買うかでずいぶん迷ったと聞いている。実はこのカメラが買えない貧乏な時代を経て、ようやく念願のイコンタを手に入れたのが20数年前。折しもスタジオでは中型カメラ全盛の時代(一眼レフは業界の位置付けでは小型カメラに分類される)。70年前のカメラを父は現役の撮影で使うつもりで購入したようだ(笑)〜あり得ん。ようやくこれを手に入れ、使い切った父の満足感が伝わってくる。その父はi生きていれば今年満106歳。二代目万歳!!