境港から隠岐島に向かったのは1976年。冬の荒れ狂う海に漕ぎ出す100tほどの定期船。想像を超えるひどい船旅だった。乗船は3時間以上。隠岐島本島の西郷港に着くころには船底キャビンの全員がぐったりとしていた。いや倒れていたと言って良い惨状。青白い表情のまま無口で、あたりは汚物だらけ。まるで木の葉のように揺れる船室で、乗船客は掴まるところもなく体が本当に宙を舞った。僕は客室に入らずデッキで寒風を浴び続けていたので船酔いはしなかった。船員から危険だから客室に戻るよう指示されても言うことを聞かなかった。いや聞けなかった。あまりの惨状に。
隠岐島の先に竹島がある。地図上の表記は「隠岐群島」となっている。