丹後半島を歩き通し、夢遊病者の自分を危うくダメにしてしまう旅の終わりに、隠岐島に渡った。3時間余りかけて100トン足らずの小舟で真冬の日本海を渡る。それだけで修行であったが、宿も決めず渡ったわけで、夕方に入港してひたすら宿を探した。
今でも忘れられない。島唯一の民宿「一力屋」のおばちゃんに頼み込んで泊めてもらった。晩御飯はむろん出ない。しかし翌朝、暖かい朝食を振る舞ってくれた。食事に付き合ってくれたおばちゃんから説教を食らった。これが僕を救ってくれた。
「写真というのは『インテリ・ヤクザ』のすることじゃのう」
そう言われて涙が出た。そして夢遊病者が我に還った瞬間でもあった。
おばちゃん、ありがとう、ありがとう、ありがとう。
ーーこれからは人のために生きるよ。写真も世の中の人のためだ。
そう気付かされた、独りよがり(独善)の旅はここで終わった。